医学生わくばの欲張り技術ブログ

〜E資格を取りに行く!〜

AIに医師の代わりは務まらない

 わくばです!

 AIの勉強をしていて、エキスパートシステムとかAIが擬似的に専門家レベルの判断を下せるようなシステムの開発があることを知りました。このシステム自体は専門家の知見や判断力に焦点があって、まだ医師の仕事には程遠いように感じています。

 実際AIが医師に取って代わる時代が来るのかというと、おそらく世代としては僕が死んだ後ではないかなぁと思います。少なくともシンギュラリティを超え、AIが自ら学習するレベルに達しないと難しいでしょう。というのも医師が相手しているのは患者、すなわち一般人であるという点が大きなハードルになると思っているからです。AIが専門家を納得させる判断を下せるようになるのは、そう遠くない未来に実現するでしょうが、患者という非専門家を納得させるのは非常に難しいと思います。これはAI業界の問題というより医学体系そのものの問題かもしれません。

 ある医学的知見が正しいかどうかは現在多くの場合「エビデンス」という言葉を用いて説明がなされます。このエビデンスという言葉はいかにも客観的で確固たる証拠のように感じますが、その実確率論にすぎません。もっといえば有意差を示すために用いられる有意水準5%というのはかつてFisherというイギリスの統計学者が決めた主観的なものです。ゆえに「エビデンス」という言葉を支えているのは「慣習」にすぎないのではないかと思います。高々200年の慣習に根ざす西洋医学と、4000年の歴史と経験に支えられる東洋医学ならば、もしかすると東洋医学のほうが信頼に足るかもしれません(笑)。冗談はおいといて、結局「エビデンス」という言葉で説得が効くのは”専門家”の間のみと言えます。

 では、現場の医師はどうやってこの確率論、ひいては「慣習的に」としか言えない医学的知見を患者に説得しているのか。それはおそらく人情、感情といった「人間性」という部分ではないかと思います。「70%の確率で手術は失敗します」とだけ伝えるのと「成功確率は30%と言われる厳しい手術ですが、スタッフ一同最善を尽くします。一緒に戦いましょう」と言うのか、用いている事実は同じでも患者さんの納得のされかた大いは違います。これができない限り、医師の仕事はAIには不可能です。患者の感情を読み取り、適切な言葉を選び、嘘にならない程度に事実を柔らかく言い換える。専門家を説得するのと患者を説得するのとでは大きく懸隔していると思っています。

 臨床医の話しかしませんでしたが、基礎研究医の仕事などはどうなのでしょうかね。いずれにせよAIにはまだまだ問題が山積みです。問題提起のみでなく解決策も考察できるように、引き続き勉強頑張っていきたいと思います。では。